小竹の昔話
第1話 抱き石地蔵の話
昔々、長崎街道筋に上町という小さな村がありました。近くに遠賀川が流れ、船頭さんは米や野菜、地方の特産物を運ぶ仕事をしていました。毎年夏になると、川へやって来て水遊びをする子どもたちで大変にぎわっていました。
ところがどうしたことか、年に1度は子どもがこの場所で水死していました。うわさでは、この川に住むかっぱが子どもの足を引いているということでした。
あるとき、船頭さんが神のお告げを聞いて、川底からひと抱えもある石を引き上げました。どうもかっぱは、石の重みを利用して子どもを沈めていたらしいのです。この石を祭ったところ、水死者がなくなったと言われています。
そのとき船頭さんや村人によって祭られた石を「抱き地蔵」と呼んでいます。この石は、小竹区上町の六地蔵公園内にあります。
文 郷土史研究会員

▲案内(抱き石地蔵)
小竹上町バス停から歩いて約2分。
六地蔵公園内に祭られています。地元では水神様と呼びます。
第2話 一本柳の話
昔々、勝野村の恵下山という所(今の町中央公民館近く)に古いお寺がありました。あるとき、このお寺を小竹の地へ移転する話が持ち上がりました。お寺の釣り鐘を運ぶために、庄屋と村人とが話し合って、イカダを造ることになりました。なぜなら、道中の牟田の付近には沼地があったからです。
でき上がったイカダの上に釣り鐘を縄でしっかり結んで、沼地を渡り始めました。ところが沼の真ん中にさしかかったときに、突然縄がほどけ釣り鐘を落としてしまったのです。重い釣り鐘のことです。みるみる泥中深く沈んでいきました。村人は、釣り鐘の沈んだ場所を後世の人に伝えるために、一本の柳を沼地に植えました。
やがて柳は大きくなり、長い間風雨にさらされ老木となって沼地から姿を消しました。柳と釣り鐘のあった場所は不明です。
文 郷土史研究会員

